綺麗なものが好きだ。きらきらと輝いて、眩しくて、見ているだけで胸がほわほわと浮き上がる。それを眺めているとそれだけで一日が消えるように飛んでいったって、私は一度も後悔したことなんてない。友達には「飽きないの?」なんて聞かれるけれど、飽きるなんてとんでもない!むしろ、どうして飽きることができるのか不思議なくらいだ。 「折原くんの顔、好きだよ」 「顔だけ?」 「うん。顔だけ」 折原くんは困ったように眉をひそめて肩をすくめる。綺麗な顔は、どんな表情をしていたって、きれい。折原くんは私が今まで出会った男の人の中で一番秀麗な顔立ちだった。嘘吐きの爽やか笑顔だって、人間を愛してると言った時のとっても嬉しそうな笑顔だって、平和島くんと関わって酷く機嫌の悪そうな顔だって、私は見惚れてしまう他ならない。冷たい表情も聖人のような表情も同じ人間とは思えないくらい、美麗で、私は自分でも驚くほどに彼に恋焦がれている。 「さんだけだよ、そんなこと言うの」 「えー。折原くん、モテそうな顔してるじゃん」 「それはまあ、否定しないけど。俺の中身知っててさ、それでも顔が好きって言い切る女なんて、さんくらいだよ」 「何よその言い方。まるで私が物好きみたいじゃない」 「みたい、じゃなくてそう言ってんの」 馬鹿だなぁ、さんは。折原くんは傷一つない白くて優麗な手で、私の頭を軽く撫でる。あ、笑った。人当たりのいい好青年のような嘘吐きの笑顔でも、恐れてしまうくらいの冷たい笑顔でもない、素の、本当に思わず出てしまったというような笑い方。折原くんでもこんな顔するんだな。どんな顔をしていたって、彼の顔が好きだと言うことには変わりはないけれど。彼の顔なら何時間だって眺めていられる。ああ、持ち帰りたい。ホルマリン漬けにでもして、家に保管したい。私の羨望の眼差しを受け取りながら折原くんは歪んだ美しい笑顔を振りまいた。 「さん。いつになったら、俺のこと、中身も一緒に好きになってくれる?」 ごめんね。私は綺麗なものを愛してるから、きっとそれは一生ないかな。 きみはうつくしい
(全く、歪んでるね。君も、俺も) [2011/09/14] |