「耀さんて、足長いですよね」 は歩きながら、「ほら、耀さんの一歩、私のより全然大きい。なんかずるい」と下を指さす。確かに我が数歩進むごとに、は我よりも多くの歩数を踏んでいる。けれどそれは我の足が長いんじゃなくて、おめーらの足が短いだけあるよ。大体欧州の奴らはもっと長いあるね。そもそも欧州の奴らは足どころか全体的にむかつくほどでかいあるが。そう言い返してやると、はむすっとした顔になった。そんな顔も可愛くてつい口の端をつりあげると、は拗ねたように口をとがらせ「どうせ私は胴長ですよ」とそっぽを向いた。 「はいはい、我が悪かったあるよ」 「子供扱いしないでくださいっ」 「何を言っているあるか、まだまだ子供のくせに」 「子供じゃないですっ!例え子供でも、耀さんには子供扱いしてほしくないです!」 そうやってむきになるところが子供っぽいということには気づかない。急いで大人になろうとなんてしなくても、背も顔も考え方も、時々見せる憂いた表情だって、少しずつ確実に大人に近づいてきていることを、知らない。けれども教えてやろうとは思わない。気づかないで追いつこうとして、背伸びばかりして空回るが可愛いあるからなぁ、教えたらもったいない。 「背は低いくせに、足が長いなんてずるい」 「や菊よりは大きいね」 「菊兄はともかく、私より大きくても自慢になりませんよ。男の人にしては小さい方です」 菊兄よりも少し大きいくらいの背丈なのに、足が無駄に長いから、余計に悔しいんじゃないですか、とは下を向いた。それから我の足を見ながら、は我の歩幅に合わせるように足を開く。そうやって悔しいだのずるいだの言って、対抗するあたりはやっぱり子供ね。一歩一歩、同じだけ開いて、なおかつ置いていかれないように一生懸命ついてきている姿が、親鳥から離れまいとする雛のようでなんとも可愛らしい。 「、大股で歩くと不格好あるよ」 「いいんです、これで」 「…下ばっかり向いてるとぶつかっちまうあるよー」 「大丈夫です!」 意地を張って背伸びを続ける子供の姿に、つい笑ってしまうと、は不満げに頬を膨らます。あいや、そんな顔したってそんなが可愛くて仕方がないことには変わりはないね。 爪 で踊る 先 こども [2011/08/06] |