目が覚めると目の前に日本さんがいらっしゃいました。 「…にっ」 「おはようございます、さん」 おはようございます、じゃないですよ!ええ、な、なななんでこんな状態なんですか。それにしても日本さん間近で見ても素敵です。ってそういうことじゃなくて。急いでバッと起き上がって周りを確かめる。起きあがった先には机があって、外はオレンジ色の光に包まれている。え、あれ、もう夕方?昼間じゃなくて?っていうか私日本さんの同人誌の原稿書いてたんじゃなかったっけ?いつのまにか寝ちゃった? 「ひゃっ」 「何を考えてるんですか、さん」 にゅっと伸びてきた日本さんの手が私の肩を掴み、そのまま引っ張られ倒される。ええ、あああ、あのあの。先ほども見たこの近さはヤバい。私が焦って口ごもるのを日本さんは楽しそうに見ている。なんでそう余裕なんですか、年の功ですか。っていうか日本さんってたまにマジで何考えてるかわかんねえ。今日は折角遊びに来たのに「原稿が終わってない」とかなんとか言って全然構ってくれないどころか「さんも手伝ってください!」なんて言って無理矢理原稿の一部を押しつけたくせに。っていうか原稿終わったんですか?私途中で寝ちゃったんでわかんないんですけど。 「あ、あの、日本さん」 「はい、なんでしょう?」 「げ、原稿はもういいんですか?ほら、今日中に終わらせないと間に合わないって」 「ああ、あれですか。さんがぐーすか眠っている間に死ぬ気で頑張ったのでどうにかなりましたよ」 あの量をこの短時間で…!日本さんのオタ魂のすごさを垣間見た気がする。日本さんはにこりと私に笑いかけて、「だから私も疲れているんですよ、少し休ませてください」休むだけだったらこんな体制する必要ないじゃないか!炬燵の中で発する熱とは違うものが、私の頭へと昇ってくる。のぼせる!炬燵の中でのぼせます、日本さん!日本さんは私の奮闘を知ってか知らずか「あったかいですね」と、私を抱きしめる。…むしろ熱すぎるくらいです。 「に、日本さん。今日は私が夕飯作ってあげますから、その間休んでてください」 「さんにやらせたら食材が全て無駄になってしまいます」 「…もうちょっと八橋に包んだ言い方してくれません?日本さんの得意技でしょ?」 「……イギリスさんのよりは美味しいですよ」 「全然包まれてません!包めないほどの不味さですか、私の料理は!」 「兎に角、夕飯くらいちゃんと自分で作れますから」 「(否定もなしか…!)」 「だからもう少し、此処にいてください」 「…でも、」 「今日はあまり構ってあげられなかったうえ手伝わせてしまいましたし」 「……」 「それともさんは嫌ですか?」 とんでもない!ぶんぶんと首を横に勢いよく振ると、日本さんは「なら、もうすこしこうさせてください」と私の頭を胸板に押し付ける。今日は夕飯を食べて行かれてはどうですか、頭上から聞こえるその声に私はもう首を縦に振ることしかできないのだ。もうちょっと、夕陽が沈むまで、炬燵の中の熱も、私の熱もとれることはない。 (誰か電源を切ってくれ)
[2009/05/20] |