クリスマスには幼馴染でお隣さんの田島家と一緒にパーティーをすることが私の家での恒例だった。なんせ田島家は子供がたくさんいるもんだから、いまさら一人二人増えようが関係ないらしい。お母さんたちは楽しそうに話を弾ませて、お父さんたちはビールの乾杯をして、私たちは悠一郎のおじいちゃんやおばあちゃんにこっそりお小遣いをもらったりしながら、悠一郎はお兄ちゃんお姉ちゃんと一緒に別の部屋にうつって夜なべでゲーム、なんていうのが毎年のことだった。うっかり夢中になっちゃって、ついそのまま田島家にお泊りなんてことも珍しくなくて、次の日に自分の家に帰ると、寂しい気持ちでいっぱいだったなぁ。そして私は今年もぽちぽちとボタンを押して画面の中の筋肉ムキムキのマッチョマンを動かす。兄妹の中で二番目のお兄ちゃんが一番格ゲーが得意で、その次に上手だったのが悠一郎、そして一番下手なのは私だった。 「あーまた負けたー!」 「よっしゃー!」 テレビ画面にはWINNER1Pという文字が浮かんでいて、軽快な音楽が奏でられている。ちくしょー、これで十連敗…!やっぱり家にゲームがあっていつでもできる悠一郎と一つも持ってない私じゃあ差があって当然だって!思わずコントーラーを投げ出して、ゴロンとベッドの上に寝転がる。二人しかいない部屋は、妙に広くて、でもなんだかむずがゆい。 「ゆーいちろー強すぎ」 「が弱いんだろー」 「それはしょーがないじゃん。っていうか、お姉ちゃん遅くない?」 「姉ちゃん、今日は泊まるって言ってたぞ」 「えっ」 うそっ!?帰ってくるって言ってたのに!私がそう言って起き上がると、さっきメールきてたーと悠一郎が携帯を見せてくれた。メールの中身は「今日泊まってくるね。お父さんには適当にごまかしといて」と語尾にハートマークまでついてる。彼氏とのラブラブっぷりを見せてくれた悠一郎のお姉ちゃんのメールを見て切なくなり、私は携帯を横に置きそのまま後ろに倒れこんだ。 みんな今頃彼氏彼女と一緒にあまーいクリスマスを送ってるんだろうなあ、と思うとちょっとだけ羨ましくなる。 「さみしーなー…みーんな彼氏とか彼女とか作っちゃってさー」 「も作ればいいじゃん」 「できたら悠一郎一人ぼっちになっちゃうじゃん」 なんて強がり言ってるけれど、たぶん一人ぼっちになっちゃうのは私の方だ。悠一郎モテるし、彼女なんてすぐできちゃう。悠一郎のお兄ちゃんもお姉ちゃんも、恋人作っちゃってさ、なんだかずるい。私だけ皆に置いて行かれてる気がして、寂しいなあ。「いーこと思いついた」悠一郎はそう言って私の横にどかっと座り、ニッと無邪気な笑顔を向けた。 「俺らが付き合えばいーじゃん!」 「…は?」 「そしたらどっちかが一人ぼっちってこともねーし!」 「却下」 「えーなんで!」 「当たり前でしょーが!だいたいね、あんた私のこと好きなの?」 「好きだよ」 迷いのない返事に一瞬ドキッとしてしまった。胸を高鳴らせて「…恋愛対象として?」、悠一郎はまっすぐとした目で私を見下ろし、「うん」とまっすぐな答えを出す。いつのまにか、左手の上に悠一郎の右手が乗せられてる。ドキドキと心臓がうるさい。そのまま悠一郎は横を向いて、私に覆いかぶさり、自分のと私の唇をくっつけた。口はすぐに離されて、至近距離で「な?そしたら寂しくない」といつもの顔で言う。寂しさは全然まぎれない。…明日の朝になったらきっといつもと同じ寂しさがやってくるんだろうな。それは全部、悠一郎のせいだよ。 さみしい片手を
取ってくれるひと [2008/12/25][title by alkalism] |