新学期。誰もがドキドキワクワクのクラス替え。掲示板に貼られている紙に書かれている自分の名前を発見してから、もう一人、アイツの名前を探した。けど、見つからない。見つからない。「あいつ、留年したんだってよ」「はぁあああ!?」どうりで見つからないわけだ!




☆☆☆




「は ま だぁぁぁあぁ!」


始業式が終わってHRも終わって即急に1年9組に向かって目的の人物を発見して殴る殴る殴る。「だああもういてぇっつの」「うっさい馬鹿田!」あたしの頭は怒りで一杯だっつーの!9組にはまだまだらに人がいて、急に訪れた上級生のあたしが行き成り一年ボーズ(いや本当だったら同学年のはずなんだけど)を殴っているものだから唖然としている。だけどそんな視線を気にしている暇なんて、あたしにはない。


「留年したんだってね」
「あれ、知らなかった?」
「初耳だっつの」


この浜田のせいで、朝から気合入れていたのが台無しじゃないの。今年も同じクラスになれればいいな、なんてあたしらしくもない乙女的な考えにいたって昨日は眠れなかったって言うのに。しかも留年のことずっと黙ってた、なんて。(そりゃあバイトで忙しいことくらいは知ってたけど)(留年するくらい学校サボってたなんて知らなかった、)(でも気付けなかったあたしも馬鹿だ)いつもそうだ、あたしは彼女なのに、浜田はなんにも言ってくれない。言ってくれたって、いいじゃない!浜田について、あたしは知らないことが多すぎるんだ。


「留年なんかしちゃって…同じクラスになれたら、とか考えてたあたし馬鹿みたい」
「…ごめん、」
「一年ずれちゃったらね、もう席替えしたり、授業中にこそこそ話したり、できないんだよ」
「うん、」
「修学旅行だって、一緒に行けない」


全部全部、あたしは楽しみにしていたのに!(そりゃあ、今言ったことはクラスが違ったら出来ないことばかりだけど、)(それならそれで、先生恨むだけだもん)ああもう殴り足りないな、留年した浜田の顔を見ているとなんだかムカムカしてきてあたしはもう一度グーで浜田の頭を殴ってやった。浜田は「いてて」と呟きながらもなんだか顔はへらへら笑っていて、それが余計に癇に触った。


「…あたしは怒ってるの」
「わかってるって」
「笑いながら言うなっての、ムカつく!」
「だって嬉しくってさぁー」
「はぁあ!?何あんたMだったの?」
「違う違う!がオレのことでそういう風に思ってくれたのが嬉しいんだって!」


自分の状況わかってるの?留年だよ、留年。もう1度1年生をやり直すんだよ?なのに浜田は笑ってる。


「そりゃあオレだって一緒に修学旅行とか行きたかったけど。でも、なんかこういうことで怒られるとさー愛されてるなーって感じがして。もうすっげー幸せなの。わかる?」


「ばっかじゃないの!?」
「いてっ、殴るなよ!」
「……馬鹿なところが好きなんだけどさ」


恥ずかしながらも言った言葉に、浜田は照れながらも「オレも好きだよ」なんて言う。浜田は馬鹿だ。だけど、あたしはそんな馬鹿な浜田が好きだ。修学旅行行けなくたって、席替えで隣になれなくたって、もういいよ、考えるのも馬鹿らしい!






ぐるぐる








四重奏は








渋滞中

(やば、ここ教室だって忘れてた…)




[2008/11/16][title by ROMEA]