カリッという音がしたと同時に、指先から真っ赤な液体が伝ってきた。それから徐々にじんじんと指に痛みが響いてくる。それを見て榛名はにやりと笑う。うわ、変態だこいつ(なんて今更かもしれないけど)。


「何すんの」
「あー、…なんとなく。見てたらやりたくなって」


なんとなくって!それで本当にやる馬鹿がどこにいるってのっ(…此処にいた)。榛名はひんむいた私の皮を見て「きたね」と一言吐き捨ててついでにその皮もぽいっと捨てた。汚いって、…自分で剥いたくせに。そりゃあまあ、汚いもんだとは思うけどさ。元々自分のものだったものを悪く言われると、なんだか腹が立つ。思わず眉をしかめると、榛名は楽しそうに口元を綻ばせる。榛名が私の嫌がることが大好きだってことは知ってるし、出来れば榛名の思い通りになんかなりたくない。けど、どうも顔に出さずにはいられないのだ。指の上の血の雫は大きな塊になって、今にも地面に落ちてしまいそうだ。ティッシュは見当たらない、探している暇もないので、とりあえず応急処置で自分の指を口の中に含んだ。


「アレだよなァ」
「…何」
「なんつーか、えろい?」


私に聞くな。自分の指をくわえながらそう言い返すと、「うん、やっぱえろい」と今度は断言される、んなこと知るか、どうでもいい。口の中に広がる鉄の味を味わいながら睨んでやると、榛名は勝ったとでも言うような誇らしげな顔をした。どうせティッシュ隠したのも榛名なんでしょ、わかってるんだからね。でもどうしようかな、ずっとくわえてるわけにもいかないし。残念ながらティッシュは持ち合わせてない。汚れるのは嫌だけど、ハンカチで包もうかな。すると急に腕をひかれ、強制的に口の中から指を引きずりだされる。涎が指と口との間に繋がっていて、その糸は重力に従って崩れていくようにのままに落ちていく。ちょ、汚れるってっ。文句を言おうともできる暇もなく、その手は思いきり榛名の口の中に放り込まされた。


「は、ははるなっ」
「うえっ、まじぃ」
「当たり前でしょ!」


動悸がとんでもなく速くなり始める。榛名は不味いと言いながらもはむはむと私の指を舐めまわす。わ、えろ…じゃなくて!指が相変わらずじんじんと鈍い痛みを鳴らす、でもそれと同じくらい背中をゾクゾクさせるような何かが私の中を駆け巡る。やめて離して、と何度も言うけれど「そう言われるとやめる気なくなるんだよなァ」と言い返される(わかってた、榛名は天の邪鬼だ)。私の方こそ、もうちょっと学べばいいのに全く学習しないで同じ手に引っかかってる気がする、馬鹿みたいに何度も。冷静を通したいのに、榛名がそうはさせてくれない。体っていうのは変なところ、正直だ。私の言うことは決して聞いてはくれなくて、榛名の思い通りに操られている。全部が熱くなってきて、それを見る榛名の目は酷く妖艶で、気絶しちゃいそう。だけどそれさえも許してくれなくて、榛名の舌が私の指に刺激を与え続ける。


「ちょ、どさくさにまぎれてどこ触って……!!」
「いいだろ、別に。減るもんじゃねーし」
「減る!私の気力が!」


気付いたらもう落とされたところ。






   壊 遊 
    して んで まえて




[2008/11/01][Thanks 50,000!!][りささんへ!]