「ルルーシュ!」 頭の中が混乱し始める。死んだと報道されていたゼロがあそこに立っていて、ルルーシュの胸に刃を突き立てているその姿が、ぐにゃりと歪み始めた。頭がぐわんぐわんと揺れ始めて、支えを必要とするように隣にいるリヴァルの腕を握った。ルルーシュがゼロに刺された瞬間に身を乗り出していたリヴァルは一瞬驚いたようにこちらに顔を向けたけれど、もう一度視線を二人に戻す。ゼロから離れたルルーシュの体がふらついて、国旗の上を滑り落ちた。 「…う、そ」 今頃出てきた言葉たち。コーネリア様の声とともに、周りで呆然と立っていた人たちが走りだす。何人かが人質の解放に向かっているみたいだ。わたしはその人の波に無気力なままに流される。掴んでいたリヴァルの腕を離してしまっても気にならなかった。転んでしまっても踏みつけられてもいいや。ふらつく足を躍らせながらその中に彷徨っていると、何かにがしりと腕を掴まれた。そして引っ張り出された先には、涙目のリヴァルがいた。腕を掴んだ手は、わたしを見た瞬間に緩み始める。 「俺はっ…皆と一緒に、楽しくやれればよかったんだよ…!」 「うん」 「ルルーシュが皇族だろうがなんだろうが、あいつはあいつで、」 「…うん」 「全然、関係なかったんだよっ」 「…っうん、うん」 俯いて、リヴァルの言うことに一つ一つうなづきながら眼からいっぱいいっぱいの涙が出てきた。しっかりと地べたに足を踏みつけて、人の波はわたしたちを迷惑そうに避ける。だけどそんなの関係なかった。わたしはただ目の前の歪んでいくものを拭きとるのにせいいっぱいで。緩んだはずの手がもう一度強くなる。見上げると、リヴァルの顔もぐちゃぐちゃになっていた。「ゼロ、ゼロ!」と周りから耳障りな雑音が聞こえる。リヴァルが何度も名前を呼ぶ、わたしも同じように呼んでいる。それだけがわたしの耳にしっかりと残った。 |
ねえ、ルルーシュ。ルルーシュがわたしたちと過ごした日々は、もしかして全部君の演技だったのかな。皇帝としての悪逆非道の君が本物だった?だったら、わたしは君の演技に騙され続けてあげる、いつまでも。だってわたしが楽しく送ってきたことは嘘じゃないから。
[2008/10/02] |