隣でぐっすり眠っているの髪に触れる。するすると俺の指をすり抜けるそれが、愛しく思えてそのまま口付けた。甘い、香りがした。心臓がもしついてたら、俺のは今どれほどの速さで動いていたのだろう。きっとバクバクだった、おかしくなるくらい。髪の毛の間から見える白い肌には赤い痕が見え隠れする。それに満足しながら鎖骨に触れると、がうねり声をあげながら寝返りを打って、びっくりして手を引っ込めてしまう。けれどは相変わらず夢の中だった。が色気のない寝言を言いながら、俺のいる場所とは逆の方へと向いてしまったことに少し悔しさを覚えて、ズルズルとの方へと移動して逃がさないように後ろから抱き締めた。の体温がこちらにも伝わってくることに、心が満たされていく。まるで、が俺のものになったみたいだ。とくとくとくとく、…心臓音が伝わる。の音は心地よくて好き。さらさらした髪が好き。暖かな体温が、柔らかな声が、細い首筋が、揃え切れてない爪が、不器用な性格が、好き。ぜんぶ、すき。


「…ん、……れ、ん…?」
「…はよ、


心臓音も髪も体温も声も首筋も爪も、本当に全部俺のものに出来れば、いいのに。錯覚に陥ってることに気づいていてもなお、満たされている気分でいる自分が憎たらしい。「おはよう、レン」こちらを向いて微笑んでくれる笑顔も眠たそうな声も消え入りそうなくらい白い肌も細くて折れてしまいそうな指も艶やかな足も塞いだら抵抗しない唇も、ぜんぶ、ぜんぶほしい。


「、


呼べない名前、手に入ることのないからだ。








パープルトラップ
(そんな俺たちは、痛みばかりを背負い今日も)(欠点を見つけて、過ごしていくんだ)






[2008/08/26]