[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。







「…阿部」
「んだよ」
「何でそんな真剣にそこ、見てんだよ…?テストの範囲じゃねーよな?」
「…単細胞生物になりたいんじゃないのー?」
「水谷死ね」
「えええ、なんで!」




先生が出張で自習となった生物の時間、自習のページとは全く違う場所、単細胞生物のページを阿部が見つめていたのでうっかり質問をしてしまった。最近気づいてしまったことなのだけれど、水谷が言ったことに対して阿部が毒舌で返す場合はたいてい図星なのだ。と、言うことは。…考えたくねえ。水谷はいきなり暴言を吐かれたことに対して、阿部が見ているページと掛けているのか、「阿部の単細胞ー!」とかなんとかいい返している。阿部のバカ、というつもりで言ったのだろうけれど…水谷、単細胞って実は頭がいいんだぞ(って、この前授業で先生が言ってたけど、聞いてなかったのだろうか)。


阿部の印象ががらりと変わったのは同じクラスの山野と阿部が付き合いだした頃からだった。山野っていうと口調は常に命令形、そしてわがままで俺様女であの武蔵野のピッチャーみたいな雰囲気もあるから絶対阿部とは合わないって思ってたのに。しかも一番驚いたのは、阿部がすんなりとわがまま俺様山野の言うことを聞いていることだった。最初はぶつぶつと文句を言いながら、でもいつの間にか文句すらも言わなく、いや思い浮かばなくなったらしい。その現場を見た田島が「すげー!!目からうろこ!」とか驚いていたくらいに阿部の変化は大きかった(でも田島、使い方違う)。




「……はぁ」
「何?」
「いや、別に。あ、山野が呼んでんぞ」




少し離れた場所で、山野が手招きしているのを見ると、阿部は溜息一つ吐かずに立ち上がって山野の方へと向かう。「やりなさい」という声が他の雑音に混じって聞こえた。うわ、またやってるよ。しかも阿部も「へいへい」ともう完全に支配されておまけに順応している。…うーん、見ていたくねえな。




「阿部ってさー、なんでそうまでして山野と付き合ってんだろーね」




そんなやりとりをしている二人の方に顔を向けながら、水谷が俺に聞いてきた。俺が知るわけねえだろ、と突っ込むとまあそれもそっかあとふぬけた声が返ってきた。


でもまあ、そんな関係のあいつらだけど山野はちゃんと彼女らしいところがある。弁当作ってやったりとか帰り待ってたりとか。弁当の中身がタバスコ入りでも全部食えとか帰りが遅かったら何か奢れとか言ってる…とかは置いておくとして。阿部が単細胞に一瞬だけでも憧れたのって、きっと細胞分裂でもしたいからなのではないか。あれだよな、流石に相手が好きでも限度があるというか、きっと流石にタバスコ弁当とお財布が辛いから自分の代わりが欲しいのかも、しれない。




「あれだよなー。なんだかんだで山野って阿部に愛されてるよなー」
「…水谷」
「んー何?」
「うぜえ」
「え!なんでなんで!!花井も酷い!」




よくそんな恥ずかしいことが言えるよな。とかなんとか俺も同じこと考えていて妙に気恥ずかしくなっただけである。スキって残酷だよなぁ。









ミルク
      に






コーヒー
     いってき




[2008/06/17][Thanks 30,000!][ドS/単細胞/教室|かゆ]