「…何してンだよ」
「さ、探し物…」




、最悪の失態です。


携帯をなくして教室やら机のなかやらロッカーやら探したのだけれど見つからず、最終的には友達のちーちゃんと一緒にお昼を食べた校庭のベンチあたりの草をかきわけながら歩き回っていたら、野球部のほうから飛んできたボールにすってーんと当たって転んでしまいました。や、別に転んだことはたいしたことないんだよね、ぶつかったのは頭じゃないし、大した怪我はしてないわけだし。それよりも飛んできたボールをとりにきた榛名くんに転んだ瞬間にパンツを見られました、…よりによって榛名君に見られるなんて!(や、別に他の人なら見られてもいいって意味でもないけど)普段話とかしないから、話せて嬉しいかなって程度には思うけどパンツはちょっと!!榛名くんあさっての方向向いちゃってるよ、絶対嫌なもん見ちゃったなとか思ってるよ!今日は厄日だ!きっと一生の中でこれとない厄日だ。じゃないとこの状況説明つかない。歌いながらのんきに探しているからきっとこうなるんだ、と後悔。




「あー…オレも探してやるよ。何探してンの?」
「えええ、いいいいよ!野球部期待の榛名くんにそんなことさせらんな」
「いいっつの。いいから言うこと従え」




従えってこの人本当に秋丸くんの言うとおりオレ様体質なんだな!強引すぎるけれど、これはたぶんお詫びというやつだ、ボールとパンツの。(ということにしておこう)ボールのことは気にしてないからいいんだけど、ごめんね榛名くん、パンツみられた心の傷はそんなことじゃ消えないの!!本当は色々不味かったから断ろうかと思ってたんだけど、断ったら容赦しねーぞ的な目で見られたら断ることなんか不可能です。わたし榛名くんの目とか言葉って苦手だ、だってキツイんだもん。もうこうなったらしょうがないので「携帯…赤いの」と答えて今まで以上の力を発揮して探しに求める。榛名くんより早く見つけなきゃな!ふと隣にいたはずの榛名くんを見ると其処には忽然と姿が消えていて、あれなーんだやっぱり言葉だけなのかと自己完結。(それとも別の場所を探しに行った…?)(いやまさか!)榛名くん、手伝うって言ったくせに姿が消えるなんて酷いじゃないっすかー、いやわたしとしてはありがた半分うらめし半分なんだけど。やっぱりなんだかんだで探すの手伝うって言われたのは嬉しかったから…なーんてははは乙女じゃないんだから。一人になった校庭のベンチ周りの草をもう一度掻き分けて、掻き毟っていた。榛名くんが探すの諦めてくれたんなら、と今までと変わらないペースで先ほどと同じように某探し物はなんですかの歌を口ずさみながら探していた。




「下手くそ」
「!…ははははるなくん!?」





もう一度ノリノリで歌いながら掻き毟っているとまたもや榛名くんが現れた!榛名くん忍者みたいだな、行き成り消えて唐突に現れて。てゆうか下手って、わたしとしては結構自信あったのに…!ショックだ。「ん」榛名くんがそのごつごつした大きな手をわたしに差し伸べる。その手の中には赤い物体が。……んん?赤い物体?この物体妙に見覚えが、




「わたしのけいたい!!!」
「さっき此処に落ちてたんだよ」




拾ったのが練習の途中だったから、部活の後で先生に届けようと思って部室に置いておいたらしい。有難う神様仏様榛名様!!!わたしの携帯を見つけてくれて有難う!そーかやっぱりちーちゃんとお昼食べた時に置いてっちゃったんだなァ、我ながらアホとしかいいようがないよ全く。先生に見つかったら没収だって言うのに。それで浮かれながらメールが来てないか確認のためにぱかっと携帯を開いて、…………………固まった。




「あ、あの…榛名くん」
「あー?」
「もももしかして、けーたいの中身、見ちゃったりし…してませんよねえ?」




榛名くんはわたしがそう聞くと、にやりと嫌な笑みで笑った。血の気がサーッと引いていく。(み、見られてる…)「オレを無断で撮ってオマケに待ち受けにしてるとはなー」そう、彼の言ったとおりわたしは榛名くんの写真を教室から撮ってそれが今現在の待ち受け画面なのだ。(そーだよ、だからわたしは彼より先に見つけるぞ!って気合を入れてたんじゃないか!)携帯なくすし、ボール当たるし、パンツみられるわ音痴といわれるわ、オマケに携帯の画面見られるわで本当に今日は厄日としかいいようがない。というかわたし絶対何かに憑かれていると思う!!不幸のもとに生まれて死んでいった女の霊とか!




「榛名くんありがとう携帯見つけてくれてとってもとっても感謝してる!!それじゃあわたし帰らなくちゃだからバイバ」
「棒読みにもほどあるっつーの」
「ひっ…て、手て離してえええ!」




てゆーか痛い!すごく痛い!!榛名くん力強すぎ!わたしは恥ずかしいから今すぐにでもこの場所から走り去りたいのに!!榛名くんはわたしの腕なんか気にしないで(なななみだでそう)、「逃げんなよ」と言った。この目に見つめられてその声でそんなこと言われたらわたしは絶対逆らえない。逆らうことは不可能。脳からの命令が停止する。




「オイ」
「な、なん、ですか…」
「部活、終わるまで待ってろ」
「は…は?」




榛名くんは部活の人に呼ばれてさっさと行ってしまって、わたしは数十秒後、その言葉の意味を考えて悶々してしまうのである。原因は確実に榛名くんで、わたしはその後彼に無理矢理告白をさせられるのである。(わたしは一生彼に勝つことは不可能だ!)






LOOKING FOR YOU




[2008/02/03]