人間は誰しも変態である。…と昔先生が授業中に突然言い出したことを今でも覚えている。あの時は「授業中に何の話をしてんだよこいつ」とかそんな程度にしか思わなかったけど、今ではかなり納得できる。私は変態の部類だ。そんでもって、私の彼氏の阿部隆也はド変態だ。






「脱げよ」


現在西浦高校図書室のとある本棚の間。此処の本棚は難しいタイトルのものばっかでほとんどの生徒が近寄らないけど、こんなところでするのはちょっと。でも隆也は首を振ることを許してはくれない。ちょっと抵抗はあるものの嫌とは思わない私は変なんでしょーか。私は素直に自分のカーディガンに手を掛けた。隆也がニヤりと笑って、その笑みに悪寒を感じる。悪寒って聞くと、みんな悪い予感としか考えていないけれど、私にとってはゾクゾクしてとっても気持ちいいものだと思っている。背筋の凍る予感が私を満たすのだ。私は不器用で、体育の時着替えるのは如何ってことないのだけれど、今のような状況で緊張して手が震えるとボタンが上手く外せない。私が戸惑っていると好い加減飽きたのか、隆也が私の手を掴んで、私に噛み付くようにキスをした。その間に隆也は器用にボタンを外していく。カーディガンのボタンを全部外し終わったら今度はブラウスに取り掛かって、その間で途中で面倒くさくなったのか、ブチブチブチッと隆也はボタンごとブラウスを破いた。その乱暴な仕草が私は好きだ。


「隆也の馬鹿、これじゃ帰れないじゃない」
「そのまま帰れば?」
「隆也サンは愛しの彼女がそんな淫らな格好で外歩いてても平気なんですかー」
「俺は他人の振りすっから」


このサディストめが。最も、私がそんな姿を他の男にさらしたら嫉妬に塗れた隆也がお仕置きをしにやってくるわけだけど。まあ私にとってはそんなお仕置きさえも愛であってドキドキで素敵で、気持ちのいいものには変わりないのだけれど。私も相当なマゾだな。その足で私の足を踏んでほしいし、その手で私の手首に跡が残るくらいに抓ってほしいし、その目で背筋が凍るほど睨んでほしいし、その口から私を歪ませる言葉を言ってほしい。私はマゾヒストで変態で、そして隆也もサディストでド変態だ。世の中の人間は皆変態で、変態じゃない人なんかいないという。私はその言葉の意味を履き違えつつ、理解して、そうして利用する。私と隆也はそれでいい、変態でもなんとでも言えばいい。私は隆也が好きで、隆也は私が好きでそうなのだから、もうこれは仕方のないことなんだ。


私はもう一度目を瞑って、隆也が噛み付いてくるのを待っている。でも私が待っていても素直にそれをしてくれないのが隆也で、私がじれったくなって目を開けた瞬間にそれは始まるのである。



窒息する肖像
(他の誰にも、見せてやらない)






[2008/01/27][Thanks 20,000!][KYへ!]