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同じのクラスの田島くんは、明るくて無邪気で人懐っこくて子供っぽいけれどバッティングになると目つきが変わって集中してカッコよくなる人で、現在の高校一年生にしては身体は小さいほうなのでホームランは打てないものの、ヒットは逃さないという優れた運動能力を持っている(その一部でいいから私に分けて欲しい)ヒーローです。下、ネタ…とか、え、えろい話が大好きなところが少し、いえものすっごく玉に瑕だけど(せめて女の子のいるところでお、おおな…が如何とかはやめて欲しい)、とってもいい人で、私の生まれて初めての男友達なのです。 「田島くんが好きです」 屋上の扉を開けたと同時に、顔を真っ赤にした女の子(確か、5組の子)(すごく可愛くて気が利いて優しくて、よく男子が「あーいう彼女が欲しい」とかなんとか呟いてたのを憶えてる)とその目の前にいる後姿の田島くんが目に入りました。昼休みの屋上は私のお気に入りで、よく友達とお弁当広げて今日の授業の問題が如何とか卵焼きが美味しいとか話していて(主に私は聞き役)、でも今日は友達が購買でパンを買うとかなんとかなので、「先に屋上に行ってて!」と言われてその通りに動いてみたら、この有様。私に気付いた女子が顔を赤くして俯くと、その目線が気になったのか後ろを向いていた田島くんがこちらを振り向きました。田島くんと目が合った途端、私は無性に恥ずかしくなってドアを思い切りバタンと閉めました。(しまった、思い切り閉めたら雰囲気ぶち壊し!)(そもそも私が扉を開けちゃったことで既にぶち壊してるけど!)二人に悪いことしちゃったなぁ、私は空気読めないことが悩みの一つなのです。 そうです、同じクラスの田島くんは、明るくて無邪気で人懐っこくて子供っぽいけれどバッティングになると目つきが変わって集中してカッコよくなって、小柄な体系でホームランは打てないもののヒットは逃さず、普段とのギャップもあってとてもいいと評判のヒーロー。告白だって受けて当然です。私だってそれは判ってた、判っていたはずなのです。判っていて尚、友達でいて…。 …はい、ごめんなさい、白状します。私は田島くんを友達だなんて思ったことは、一度もないんです。ただの臆病者で振られて関係が断ち切られるのが嫌だから、せめてと思って友達と言うポジションに着いたのです。友達と言うポジションはとてもいいもので、いざとなったら「告白したら友達ですらいられなくなってしまう」という言い訳が通じるから…そうです、私はわざとそういう理由を作って田島くんと友達になったのです。好きな人を友達に格下げしてしまいました。田島くんはきっと私のことを数多くいる女友達のうちの一人と認識しているでしょう。でも私は如何しても、もう格下げなんて出来なくて無理矢理「この人は友達だ」と認識しているのです。そうしなければ話すことすら許されなくなってしまうから。だから、あの人は凄いです。告白する勇気なんて私にはないに等しいのだから。 「…っ山野!」 屋上の扉の前からお弁当を片手にトボトボと歩いて去っていた私を追いかけてきたのは、田島くんでした。本当は走って逃げ出したかったけれど、校内体力測定ランキング1位の田島くんからどんくさい私が逃げられるわけが何処にあるのでしょう。逃げようとした瞬間に腕を掴まれてしまいました。(まだ走り出してすらいなかったのに…!) 「あの、田島くん。さっきは邪魔、してごめんなさい」 「それはいーって!」 逃げたかった、今すぐ腕を振りほどいて。胸が苦しくて今にも泣きそうで、そんな顔見られたくなかったから。今でも田島くんの顔を真っ直ぐ見れなくて目を逸らせば、階段から降りてくる女子と目が合いました。さっきの子…泣いて、目元を真っ赤にさせて、私と田島くんを見つけるなり逃げ出すように走り去って行きました。 「田島、くん。さっきの子…」 「え、あー…なんか好きって言われた」 「聞いて、た、けど…」 「んで、俺山野が好きだからっつっといた」 ……え? 思い切り頬を引っ張ったらものすごく、痛かったのです。夢、じゃないです。田島くんは冗談でこんなことを言ったり、告白を断るために人を使う人ではありません。じゃあ、本当?でも嘘みたい。今日はエイプリルフール?ううん、平日の夏の暑い日。そして私の周りだけ今気温が、体温が一気に上昇してます。あまりに暑くて、熱くて指先が動きません。口も、身体も、全て。今まで真っ直ぐ見れなかった田島くんの顔を直視してしまいます。あの、野球やってる時の真剣な表情。 「言っとくけど、嘘でも冗談でもねーからな!」 「え、あ、…たじ」 「俺、諦めねーから。ゲンミツに!」 「田島くん、あの」 「カクゴしとけよ!」 私が返事をする前になにやら饒舌に色々喋る田島くん。それを聞くと余計に、私の幻聴でも夢でもないんだと実感して私の周りの気温はさらにまた1℃上昇します。それから、田島くんが近づいてきて、心臓が止まりそうなくらい早く動いていて大変な状況にある私の横に顔を持ってきて、なにやら可愛らしい効果音と共に頬に柔らかな感触がして気がつけば田島くんは捨て台詞を吐いて去っていきました。私はというと、触れられた頬を片手で抑えて、田島くんが離れていったことにより力が抜けてヘナヘナ~とその場に座り込んでしまいます。私が、悩んでいたことってものすっごく、無駄だったのですか。返事はもう決まっているのに。購買のパンを持って何故かニヤニヤしている友達に「さっき田島が大声で愛を叫んでたよ」と聞いて今度は顔を真っ青にして走っていくのはまた別のお話で。 序曲: 英雄ポロネーズ
(ちょ、ちょちょちょっと田島くん、なにやって…!)(だって山野とられたくないし)(だから、!)
[2007/09/02][title by Chopin] |