わたしのいた世界は、毎年少しずつ気温が上がるという地球温暖化が進んでいる。それは人が酸素を吸って二酸化炭素を出すこともあるけれど、車の排気ガス、夏のクーラー、そして自然破壊によって二酸化炭素を吸って酸素を出している植物が減り続けている事などが原因だ。それは人間が犯した間違い。そして、わたしは今、人間がそんな間違いを起こすずっと前の世界で生活している。 此処は空気が澄んでいて綺麗だ。空気が美味しいとはこういうことかもしれない。周りを見渡せば、緑、緑、緑、緑。視力が悪ければよくなりそうだし、よかったとしても2.0以上になりそうなくらい緑色だらけ。暑い夏も、木陰に入れば充分涼しくはなるし、植物が大量にあるから二酸化炭素はあまり増えない。現代に比べればきっとずっと涼しいに違いないはずの世界なのだ。けれど、今わたしの周りを取り巻く周囲は確実にあの現代よりもずっと高い気温なのだ。そう、朝から。顔が火照って、たぶん体温は上がり続けている。もう40度以上あるんじゃないだろうかと思うくらい熱いし、気絶しそう。どれだけ多くの植物が二酸化炭素を減らし酸素を増やし続けても、足りないくらい。目の前のオレンジ色に眩暈がする。「?」「え?あ、うん。何ですか?」しまった、上の空だった。いや、うん、でもそれは珍しく手なんか繋いだ九郎さんのせい。いつもは恥ずかしがってそんなことしてくれないくせに、なんかズルイ。如何いう風の吹き回しだ。そんな状態でわたしに如何しろと言うのだ。わたしを取り巻く周囲はそれだけで二酸化炭素でいっぱいになるというのに。「先ほどから顔が赤いが、風邪でもひいたのか?」九郎さんらしいけれど、此処まで的外れだと呆れて溜息も出なくなる。「違います!」「そうか?ならいいんだが…無理はするなよ」「しません。…折角の九郎さんの散歩なのに、風邪なんてひくわけないじゃないですか」「…けれど、手も汗ばんでいて熱い」「それは、」九郎さんのせいなんです!声が出かけたけど、出ることはなかった。わたしの前方を歩いていて顔が全然見えなかった九郎さんが振り返ってわたしを見ていたからだ。それでドキドキが増したせいともいえるけれど、それよりも 「…九郎さんの方こそ真っ赤じゃないですか。風邪ですか?」「あ、いや!これは、違、」何が違うんですか、すごく熱いのに。これ以上ないくらい赤くなっている九郎さんを見てわたしは、ああきっと彼も同じなのかと思った。わたしと同じ。倒れそうなくらい、心臓がバクバク揺れていて、熱が堪って、木陰なのにも関わらず直日光よりも自分の方が熱いんじゃないかと思うくらいで。「い、行くぞ!」「…はい」ヤケになったようにわたしの手を引いて歩き出す九郎さんを見て、笑みが零れる。また前を向いてしまった九郎さんの顔はわたしの方からは見えないけれど、きっと赤い顔で困ったようにしているに違いない。だって、わたしがそうなのだから。 「わたしたちが温暖化の原因…というのも、有りですね」「…は?」 二酸化炭素 になろう [2007/05/11] |