「「、チョコ頂戴!」」 大体、図々しいと思う。だって、二人は結構モテていて、チョコだって沢山たっくさん貰っているはずなのに、それでも尚あたしにチョコを強請るのだ。二人を見てると頭が痛くなる。なのに本人等はそんなことには眼もくれず、相変わらずの小悪魔な笑みで手を出している。 「持ってないよ、チョコなんか」 「ええー!!」 「なんでさ!」 「なんでって…アンタ達こそなんであたしのチョコなんか欲しいわけ?沢山もらってるんだから、飽きるでしょ」 「「不特定多数じゃなくて、のが欲しいんだよ!!」」 我侭言うな、いいとこのお坊ちゃんズめが。そう思いつつも口には出さない。(てゆーか、出したくない。絶対後で何か言われる)チョコの用意は、一応、したのだ。柄にもなく手作りで、思ったよりも上手くいって、渡すつもりで作っていたのだ。だけど今日が来た瞬間、渡そうと考えていた気が一気になくなってしまったのだ。だって、ほら、 「光君、馨君」 「これ、受け取って下さい」 「「え?ああ、有難う」」 本人たちにその気がなくても人が集まるのだ。ホスト部の人気は絶大で、その人気のホスト部の部員なのだから当然であろう。ホスト部でなくても二人はモテる。一緒に出かけたとき、何度痛い視線を感じたことか。だからあたしは戦意喪失し、クラスのゴミ箱の中へ自分のチョコを捨てたのだ。今持っているわけがない。目の前の女生徒と話終わったのか、二人はもう一度あたしを見直し、同じ言葉を繰り返した。 「のチョコは?」 「どうせあるんでしょ?」 「ないって言ってるじゃん」 「「ふーん。じゃあこれはなーんだ?」」 そう言って二人があたしの顔に押し付けたものは、あまりにも目の前にありすぎて眼の焦点が合わず、ボヤけて見えなかったけれど、あたしがチョコに包んだラッピングの柄に似ていた。それから、眼から少し離してみてみると、それは確かにあたしが包んだラッピングの柄で、あたしの作ったチョコだった。なんで?あたしは、ゴミ箱に捨てたはずなのに。 「僕らが気付かないわけないじゃん」 「捨てるなんて勿体無いことしないでよねー」 「…なんで…?」 「「え?」」 「なんで、わざわざゴミ箱の中からあたしのチョコ取り出したりしたの…?別にいいじゃない、チョコくらい他にもたくさんあるんだから」 そうだよ。あたしのチョコなんて二人にとっては100分の1個でしかなくて、一度ゴミ箱に入ってしまったようなものなのに。あたしが言うと、二人はきょとんとした顔になって、それからクックと、二人らしくない笑い方をしてあたしの頭にデコピンをした。 「な、何すんのよ!」 「、バッカじゃないの?」 「なっ――!」 「僕らは、のでいいんじゃなくて、のが食べたかったんだよ?」 「じゃなきゃわざわざゴミ箱から取り出さないっつーの」 「それくらい自分で気付いてよね」 そう言ってわざわざあたしの目の前でそのラッピングをビリビリに破いてチョコを取り出して食べた。ああ、そのラッピング頑張ったのに、こんなにグチャグチャにしちゃって。とかなんとかあたしはなんだかこの場で全く関係のないことを考えていると、急に光の顔が近づいてキスをした。少しチョコの味がして、甘い。それでも不味くはない、我ながら流石だ。そうして離れたと思ったと同時に今度は馨に口付かれて、あたしはまた同じようなことを繰り返し考える。そうして二人はニヤニヤ笑って、 「「ゴチソーサマ」」 少し時間が経ってからあたしの顔は林檎のように赤くなった。 |
100%のカケラたち