好きな人が、いる。その人は男のクセしてそこらの女の子よりも全然可愛くて、天然で、ちょっと毒舌で、さっぱりしているちょっと憎たらしい子。でも、憎めない人。だって、笑顔が本当に可愛いんだもの。私はその笑顔を見るたびにときめいて、きゅんとして、ドキドキして止まらないのだ。心臓が煩いのだ。だから私は、彼が大好きだと思う。でも、たぶん、確実に。彼にとって私は沢山居るお客様のうちの一人に過ぎないのだ。それに私は彼より1つ年上だし、あまり逢う事もない。ホスト部営業時間のほんの少しくらいしか逢えない上に話せないのだ。それは私にとって、なんとも辛いことだ。だけどそれ以上に、このホスト部を営業しているこの短い時間は愛おしいのだ。彼に逢える、唯一の時だから。 「先輩?」 「え、ああ…なに、ハルヒ君」 ヤバイ、ぼーっとしてた。貴重なハルヒ君との会話時間を無駄にするところだった。私は急いで笑顔を取り繕ってハルヒ君と話を再開したけれど、ハルヒ君は納得がいかない模様で私を見つめている。(そんな顔でさえ、可愛いと思ってしまう私って、)も、もしかして私がハルヒ君の話を聞いていなかったから不快に思っている!?そして嫌われた!?だ、だったらどうしよう。私は、私は好かれなくてもせめては嫌われたくない。好かれなくてもいい、片想いでもいいけど、嫌われるのだけは嫌。私の自業自得と人は言うのかもしれないけれど、本当にそれは嫌だわ。それからハルヒ君は怪訝そうな顔でそっと私のオデコに手を伸ばして、触れたと思ったら思いきり顔も近づけてきて、オデコを、ごっつんこ。 「ははははハルヒ君っ!!?」 「変ですね…熱はないみたいなんですけど」 「いいいきなりどうなされたのっ?」 「先輩、先ほどからぼうっとしていますし、顔も赤いから熱でもあるのかと思ったのですけど」 「(顔が赤いのは貴方のせいですわっ!)」 こここんなの、反則だ。行き成りハルヒ君の顔が目の前にあるだなんて。それだけで私は倒れそう。 「本当に大丈夫よ、ハルヒ君」 「そうですか?ならいいんですけど…無理はしないでくださいね」 「ええ」 少し惜しいけれど、ハルヒ君の顔が離れていった。…実は、すごく、無理をしているんです。だって私は貴方と話すだけで緊張で眩暈を起こしそうになるんだもの。少しくらい無理をしなくちゃ、話なんて出来ないよ。熱はない。けど体温は上昇する。そう、これは病は病でも恋の病と呼ぶものよ。私にも、万能な鳳家の医者にですら治すことなんて不可能な。それでもハルヒ君は私を酷く心配してくださっているらしく(なんて嬉しいこと!!)、少し考えてから私を魅了する笑顔で少しずれた答えを漏らす。 「風邪引いた時は、葱を首に巻くといいですよ」 「(風邪じゃないなんて、とてもじゃないけどいえないわ・・・)」 たぶん、この眩暈は暫く続きそう。 恋愛病 [2007/01/09] |