何時見ても見慣れない大きな門を前に私は立ち止まっている。やっぱりB組である私の家なんかよりもずっと大きいなぁ、常陸院邸は。こう考えると庶民からは結構大きい私の家でさえもちっちゃく見えちゃうよ。と何度目かに渡る関心を終えて私はチャイムを鳴らす。すると何時もどおりメイドさんらしき人の声が聞こえて、私は名前を告げようとするのだけれど、それも叶うことなく「様ですね。お待ちしておりました」と大きな門が開く。ああ、すごいなぁ。インターホン越しに私の顔が見えることくらいは私の家にだってあるし珍しくもないのだけれど、もうメイドさんに顔も覚えられているくらい通っている私が凄いと感心してしまう。顔パスってやつ?そして中に足を進めていくと、パーティ風味の私の愛しい双子が爽やかでちょっと憎らしく愛らしい笑顔で私を迎えた。 「「メリークリスマス!」」 「メリークリスマス」 「もう、!遅いよ」 「待ちくたびれたんだからね!」 「ごめんごめん」と謝ると二人は「「別に怒ってないけどさ」」と口を揃えて拗ねたように言う。そんな光景を見て私はなんとなく笑ってしまう。こんな日が来るなんて思っていなくて。それから「「どうぞ、僕らのお姫様」」とホスト風にそんなことを言って私の手をとる。私はそのまま1階の一番奥の部屋へと連れて行かれた。この屋敷に似合うような大きな扉を開くと、其処には沢山並べられた高級料理の数々と、大きな、ケーキ。 「如何?、驚いたでショ?」 「う、うん。吃驚した」 「ぜーんぶ僕らで食べて良いんだよ!好きなだけ!」 「…すごいね…」 私はつい俯いてバッグを握り締める。ああ、そうだ。この子たちは私よりもずっとずっとお金持ちだったんだ。こんなもの、必要なかった。涙が出そうになるけど、我慢しなきゃ。せめて今日は楽しく過ごせるように、二人に迷惑をかけないようにしなきゃ。ばれないようにしなきゃ。そう思うのだけれども、二人は私の異変にすぐさま気付いて(なんでこんなに鋭いのだろう)、「「如何したの、?気に入らない?」」と聞いてくる。私は一生懸命首を振る。ううん。違うの。高級料理も大きなケーキも私と過ごすためだけに用意してくれたと思うとすごくすごく嬉しいのよ。だけどね、 「あ、。コレなに?俺たちへのプレゼント?」 「え?見せて見せて!」 「あ、そそれはだ…!」 気付いたら光にバッグを奪い取られて、それは駄目といい終わる前に中に入っていた箱を開けられた。そして二人は目を見開く。その中に入っていたのは、私の手作りのちっちゃなケーキ。みすぼらしくて、あんな大きくて高級で高いケーキにはとてもじゃないけど適わない。味だってあっちのほうが美味しいに決まってる。 「…これ、の手作り?」 「、…う、うん。でもあのケーキの方が美味しいだろうし、持って帰るよ、」 「え、なんで?」 「食べようよ。美味しいそうじゃん」 「で、ででも!」 私の制止の声も聞かず、光は綺麗に切り分けて、馨は携帯で何処かに電話をする。「あ、もしもし?あのさーケーキなんだけど。皆で食べてくれない?…え?僕らのはいいよ。ちゃんと特注なのあるから」一体誰と話しているのだろう。…自惚れてもいいのかな。図々しいのかもしれないけれど、高級で大きなケーキは別の誰かにあげて、ちっちゃくてみすぼらしい私のケーキを特注と言ってくれたと。そうして私の予想通り、光が切り分けたケーキを二人は同時に口に放り込む。 「んまい」 「うん。すっごく美味しい」 「……高級なケーキのほうは、いいの…?」 「「それよりのケーキの方が美味しいって」」 この人たちは、無意識のうちに私を陥れてさらに救うのだ。笑顔でそんなこと言われたら、ときめかざるを得ないじゃないか。全くもって、悔しい。だけど、今は。楽しい時間とドキドキな瞬間を共有しよう。愛しい人たちと。 メランコリア ガールの 幸福
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