「いっちゃんの髪って、こーんなに綺麗なのになんで皆怖がるんだろーねー・・・?」
「いや、普通だろ」
「如何して?綺麗じゃない。触りたくなるもん」




私はいっちゃんの髪が綺麗で好き。なのに馬鹿な先生たちは、髪の色だけで不良って判断して、浦島太郎みたいな感じで弱い人を助けて喧嘩に発展したとしても、すぐにいっちゃんを悪いと決め付ける。あー悔しい。どんなに私が言い返しても、所詮は相手は先生。最終的には「退学にさせるぞ」とかそういう脅し文句にくるんだ。私は別に退学くらい如何ってことないのだけれど、いっちゃんがそれだけは駄目だって怒るから、それ以上言い返せなくなる。どっちにしろ退学になんかなっちゃったら、いっちゃんといられる時間が少なくなっちゃうしね。私がそんな風に愚痴ると、いっちゃんは決まってこう言う。




「別に、俺のことなんだからがそんなに怒ることないだろ」




ほら、やっぱり優しい。そーいう優しさが好きで、ついつい関係なくても口を出しちゃうんだよ。いっちゃんは確かに目つき悪いし口も悪いし、髪の色だって初対面から見たら染めてるから怖い人だって思われるかもしれないけど、本当はそんなこと全然ない。ただ少し不器用で、優しい人なんだから。だけど、やっぱりいっちゃんの髪の色は凄く綺麗。染めてオレンジにしたものよりも、ずっとずーっと。




「おら、くだらねぇこと考えてんじゃねぇよ」
「むーっ!くだらなくなんかないもん。私の大事で大好きないっちゃんの髪のことだよっ。かなり重要じゃない!?」
「あー……わかったから。興奮すんな」




何故か顔を赤くしたいっちゃんは、そう言いながら私の頭にポンと頭を置き、そのままくしゃくしゃと撫でる。あーあ。折角解かしたのにな。まぁ、帰りだしいっか。見上げれば私よりもずっと背の高いいっちゃんが夕陽に照らされていて、いっちゃんの髪とは違うオレンジがあって、いっちゃんのオレンジが綺麗に光る。ああ、好きだなぁ。私の一番好きな色。




「………なんだよ、」
「えへへ。なんでもない。ねぇ、苺ミルクちょうだい」
「やらねーよ」




私が一番好きな、帰り道。



















[2006/12/16]