Alice

Syndrome












「馨、なんでの手、離すんだよ!」
「だって殿が凄い血相で追っかけてくるんだもん、しょうがないじゃんっ!」




広い廊下を僕らは走る。庶民鬼ごっこをやっていたのだけれど殿のせいで僕らはと逸れてしまった。ただでさえは方向音痴で誰かがいないと校内迷子になるのに、手を離してしまうなんて馬鹿だ。そして僕らにそうさせてしまった殿はもっと馬鹿だ。(なんて、ただの八つ当たりだってことくらいわかってるけど、)ああ、そんなことより今はを探さなくちゃ。だって、には僕らがいなくちゃいけないんだから。(否、僕らにはがいなくちゃいけないから)第二音楽室、教室、中庭、図書室、が行きそうな場所、全て。見ても見ても見当たらない。何処にいるんだ、僕らの




「光っ!窓の外!」
「あっ、。なんであんなとこに!」
「方向音痴だからでショ」
「それもそうだ!」




外にある薔薇園の迷路にキョロキョロしながら動き回っているの姿を見つけた。直ぐに行きたい、のに目の前の硝子が邪魔でいけない。こんな硝子、なければいいのに!(なかったとしても此処は3階だ)こうしている間にも、あの迷路の中では迷うと言うのに。ただ急がなきゃと僕らは走る。目指すは薔薇園、のところへ。だけど薔薇園の迷路っていうのは結構大きくてを探すどころか僕らも迷う。見つからない。見渡しても見渡しても薔薇薔薇薔薇。鬱陶しい。如何にかしてくれ。早く、早く逢いたいのに、一分一秒でも長く傍にいたいのに、なんで皆邪魔ばかりするんだ。目の前の突き当たりを曲がると、誰かとぶつかり、お互いに転んだ。ああ、なんてタイムロス。僕らは馬鹿だ。素早く起き上がって軽く「ごめん、大丈夫?」と手を伸ばせば、




「だ、だいじょうぶです。有難うござ……、あ」
「「っ」」








やっと逢えたね、迷子のアリス。















[2006/12/12]