ボロボロの羽根。傷だらけのカラダ。血に染まった翼。こんなんじゃ、空なんて飛べないよ。








「なァ、?」




泣きそうな顔で私の顔を覗き込む。ねぇ、そんな顔しないでよ。私はそんな顔が見たいんじゃないの。そんな顔してたら、まるで私が悪いみたいじゃない。ううん、そうじゃなくて、私が悪いんだよね。でもね、私は悟空の笑った顔が好きなんだよ。そんな泣きそうな顔じゃなくて、キラキラしている笑顔が好きなの。大好きなんだよ。




「…ねぇ、笑って」
「ンなこと言ったって……ッ!!」
「笑ってよ。……ね?」




私がそう懇願するように言うと、悟空は戸惑いながらもぎこちなく笑ってくれた。あーあ、涙が出そうになってるよ。見たかった笑顔とは違うけど、私のためにそうしてくれたと思うと、嬉しい。ああ、なんだかもう眠いや。もう悔いもないし、このまま眠っちゃおうかな。でも、そうすると私は悟空を裏切ることになるんだよね。最上級で最低の裏切りの刃を振りかざしちゃうんだよね。悟空は強いから、その刃を無意識のうちにでも返して、そして私の翼からまた、羽根が抜ける。血に染まる。でも、悟浄にガキだって言われていても、悟空はもうそんなに子供じゃない。私だって死ぬ覚悟で旅をしてきたわけだし、生き物は何時か死んでしまう生き物だからこういう日が来ることを知っていた。だけどそれを受け入れられなくて困っているんだよね。




「俺ー……」
「……うん」
「………ヤだ」
「……我侭言わないでよ…」
「判ってる、………けど!!」




涙は堕ちて、そっと私の頬を濡らす。やだなぁ、私の眼からはもう涙すら出てこないのに。それから、冷たくなりかけている手を重ねて、握る。―――暖かい。それから、その体温を確かめるように、優しく、でも離すことのないように、悟空は私を抱き締める。暖かい、このまま悟空の体温が私に移っちゃえばいいのに。そしたら私はまだ、此処にいられるのに。如何して私はこんなにも無力なんだろう。笑ってほしいのに。泣いてなんてほしくないのに。傍にいたいのに。




「悟空」
「ん……何?」
「好きだよ」
「…うん。俺も」




羽根の、軋む音が、聞こえる。離れたくない。離れたくないよ。一緒にいたい、ずっとずっと!私は、悟空の傍にいたいよ。だけど瞼は重くなるばかり血は流れるばかりで止まらない、止められない。私にはもう止めることすら出来ない。傍に居るなんて不可能。笑うことも泣くことも、思い出の中でしか。そうして聞こえるは、悟空が私を呼ぶ声。




っ!!おい、!!」
「…ご、くう、………ごめん、ね…」








そうして瞳を閉じた私は、完全なガラクタとなる。羽根は全て、抜け落ち、た。













使





[2006/12/11]