今日はホスト部とお客全員でかくれんぼ、だ。なんでも最近庶民ファンとなってしまった環の陳腐なアイディアらしい。まぁかくれんぼをしたことのないお嬢様方には新鮮で楽しいものだろうし、まぁいいか。とまぁあたしはその程度の気持ちでかくれんぼに参加。一体何年ぶりだろう。うーんと、思い出せないくらい前だ。ホスト部に通うお客様の人数は結構多いため、鬼は3人ということになった。(これは当然鏡夜のアイディア)鬼は光とハルヒと環だ。「ハルヒ!一緒に頑張ろうな!」と環。おいおい光は無視ですか。ハルヒ超迷惑そう。そう思いながらもホスト部かくれんぼはスタートを切った。すると行き成り馨があたしの手を掴んで、引っ張っていった。反論する余地もなくどんどん引っ張っていく。呼びかけても応答に答えない。そうして近くにあった教室に入って、その教壇の中にあたしを詰め込んで馨も入り込んできた。 「馨!一体如何いうつもり!?」 「シーッ。あんまり大きい声出すと見つかるって」 人差し指を唇の前に翳して可愛く笑う。うんうんその笑顔は可愛いよ。すっごくすっごく。流石ホスト部ってくらいに顔が綺麗だもんね。でもこれは、うん……顔、近づけすぎじゃないですか?いやいや、狭い教壇だからしょうがないかもしれないけど、狭いなら無理して二人で入る必要ないじゃない。こらこら背中に手を回すんじゃない。心臓がバクバクで酷くなるじゃないか。判っていてやってるんだから性質が悪い。注意しても絶対聞かないし。でもとりあえず少ない希望をかけて、あたしは真っ赤になった顔を見せないよう逸らしながら言った。 「馨」 「んー」 「顔、近いから離れて」 「何?照れてんの?」 「そそそうじゃなくてっ」 否定したところで噛んだので意味はない…だろう。馨はもうニコニコニコニコニコニコニコニコ(エンドレス)と意地悪い笑顔をしていて、もうこれはあたしの負けだ。と諦めた瞬間、さらに顔は近づいて、…その、キスされた。いや、いいの、これはうん。だって馨とあたしは一応恋人同士って立場なんだし、キスするのはいいの。でもでもでも、TPOっつーのがあるでしょうに。今はかくれんぼ中で、教室の教壇に隠れていていつ人が来るのかも判んないのに。双子ファンのお嬢様にバレたら如何すればいいのあたしは。虐められるよ。靴の中に超高級画鋲を入れられてイタタな思いもするよ。それから結構高めの教科書が何時の間にかなくなっていて、帰ってきたときにはラクガキだらけかも…。…ホスト部に通うお嬢様方にそんな汚らしいことをする人はいないと信じたい、アーメン。そんなことを考えているうちに唇は離れていって、今度はギュッと抱き締められた。ああもう、状況わかっているのか、この人は。 「ちょっと、馨…?離して」 「嫌だね」 「…、別のところに隠れるから」 「今出ると見つかっちゃうよ?」 くそう。何もかも馨の陰謀か。如何しても離す気はないらしい。見つかるかもしれないドキドキ感と近くに好きな人がいるドキドキ感が重なってあたしの心臓はもうヤバイのに。もがいてももがいても、馨はあたしを離さずに寧ろまた顔を近づけてきたもんだから、もう逃げられないとあたしは確信して、諦めて眼を閉じた。 「と馨見ーっけ。……何してんの?」 「ひ、光!?」 それは触れることもなく、そして光に見つかり、驚いて馨を突き飛ばしてしまった。あたしはそういう時のみものすごい怪力が出るらしい。…しばらくは、かくれんぼは控えておこうと思いました。 HIDE&SEEK! [2006/12/10] |