花井は背が高い。(あの高さならホームランが打てる!)(かー!うらやましー!)180センチくらい。は背が低い。145センチくらい。(って小学生みてーだな)だいたい、えーっと…




「田島と花井の身長差って大体15センチなんだよね。羨ましい」
「ほーか?(もぐもぐ)」
「そーだよ!!!カップルの身長差って15センチから20センチなの!それなのに、それなのにわたしと花井はさ、さんじゅうご…」
「(ごっくん)んな気にするよーなことでもねーって」




購買で買った焼きそばパンを飲み込んで(あー美味かった!)(購買のパンサイコー!)からそう答えるとはよりいっそう険しい顔をした。


そうそう、確か35センチ差!言われてみればっつーか言われなくてもよくわかる差なんだけど、花井とってすげー面白いカップルだと思う。いや女の子はちっちゃいほうが可愛いと思うんだけどな!(ほら、「とーどーかーなーい!」とかやってるときとかにさりげなーくロッカーの上のもんとかとってやるの!)(ちょっと憧れのシチュエーション!)てゆーか、花井も背がちっちゃくて惚れたんだと思う!が背がちっちゃいぶんしょっちゅう上目遣いになってるし、なんかハムスターみたいでかわいーって思うときあるし。花井世話好きそうだからおっちょこちょいなのほっとけない〜とか言ってたし。(あ、あれ。背関係ない?)だけど背の差がありすぎるのもなー…みばえ?っていうのがよくねーんだよなって皆言ってるけど、俺はよくわからなかった。好きならそんなこと気にするような障害でもねーとも思うんだよな。(…うん、好きなら身長なんか関係ねーよ!)だけどは気になるらしくてはあと大きく溜息を吐いて机に伏せる。溜息吐くと幸せ逃げるんだぞー!って言ってやったら、「はぁ、わたし田島と入れ替わっちゃいたい」と俺の話も聞かないで変なことを言い出した。俺とが入れ替わる?……。




「面白そー!!やれるもんならやってみてぇー!」
「その能天気さが羨ましいわ」




だってさ、エロ本で見る女の人たちはみんなナイスバディで胸の谷間とかむちむちだからさ、実際の女の子はどーなんだろーな、柔らかいのかなーってすごく興味ある。だからほら、入れ替わったら胸とか色々見たり触ったり出来るじゃん!変態じゃねーよ、ふかこーりょくってやつ!(あ、でも俺がと入れ替わったとして、の胸とか触ったのバレたら)(花井に怒られる…!)でもって見るからにペチャパイだもんなー。入れ替わって触ってみても起たなそう。(あ、女の子になってたら起たないか!)…てか、あれ?もしかして俺とが入れ替わったとしたら、俺が花井の彼女になんのー!?えー花井とヤんの、しかも俺が下で花井にヤられんの!?…ぜーーーったい嫌だ!俺普通に女の子とセックスしたいもんね!いくら体が女の子になってても、男とヤるなんてマジ簡便してほしーよ。それから、俺がになっちゃったら野球出来ないんだよな、やったとしてもソフトボールだし、の体じゃあ筋肉のつけ方が違うから上手く打てなさそう。もし入れ替わったとして、胸を見たり触ったり出来る特権と手離さなきゃならないものの条件が釣り合わない。野球できなくなってオナニーでも出来なくておまけに男とヤる人生なんてヤだね!「ちょっとー何考えてるんですかー田島さーん」が俺の前で手をひらひらさせる。




「え?もし俺とが入れ替わったら〜って」
「…それはもういいよ。わたしも考えたけど田島と入れ替わったら身長的にはOKだけど精神的には最悪だし」
ってチビのくせにひどくね?」
「チビ関係ないっつのー!つーか田島だってチビじゃん、野球部で一番ちっさいじゃん!」
「それでもは140センチ台だろ!俺160あるもんね」
「くああああ!ムカつく!身長だけでも入れ替わっちゃいたい!」
「それはヤだ!」




それから暫く睨みあってからは溜息を吐いて(本日三度目!)折れた。「もういい」は体を俺と反対方向に向けて、肩をしおらしく落としている。…俺言いすぎたかな。「わたし、もうちょっと普通の身長差になりたい」謝ろうとしたらが呟くように俺に言った。俺が如何ってことないって言う理由でも、にとっては重大なんだ。俺が160あっても野球部内じゃちっちゃくてホームランが打てなくてそれが嫌だって思うように、は花井との35センチが嫌なんだ。今ならこいつの気持ちよくわかる気がする。




「だってね、35センチあると、わたしすごく見上げなくちゃならないの。でも花井の顔、たくさん見てたいから見上げちゃうの、でも首がすごく痛くなるの。それにね、ちょっと背伸びしたくらいじゃあ届かないんだよ。わたしのほうからキスが出来ないんだよ、おまけに花井は照れやだから自分からじゃ中々してくれないし」
「……」
「あとね、わたしよく小学生と間違われるから。花井と並んでると兄妹って思われちゃうの。わたしと花井は恋人なのに、兄妹だって。『あらあら、妹さんと一緒にお買い物?偉いわねえ』って。そんな風に間違えられるのもう嫌。牛乳毎日飲んでても伸びないし!牛乳なんかだいっきらい!骨太くなるだけで伸びないじゃんか!」
「…、俺さー、寝転がっちゃえば関係ないと思うんだよな」
「…は?」
「寝転んじまえばさ、好きな位置に移動できるだろ?そうしたら身長差、15センチにも20センチにでも出来ると思う!あとは、台の上に乗ってみるとか!鉄棒にぶら下がると伸びるとか。つむじを押すと背縮むとかって聞いたことあるから花井にやってみればいいじゃん!」
「…あ、あほじゃないの…」
「いいじゃんべつに!背の伸ばし方なんて色々あるんだよ!!」
「……田島、ありがと」




は俺のほうに振り向いて、「でも、田島。野球じゃあ寝転がったり物の上に乗ったりして誤魔化せないんだからね!」と言った。いいんだよ、俺はこれからぐんぐん伸びるんだから!だってたぶんきっとこれから!















センチメンタル




[2009/12/28]