Kitty






目の前にはお向かいさんのとんでもない写真と、それを撮った張本人(満面な笑顔)がある。




「これ、可愛くない?可愛くない?超可愛くない!?」
「……かわいくない」
「えー…修くんの猫耳が可愛くないなんて、ルリちょっと可笑しいんじゃない?」
「可笑しいのはの頭でしょ」




野球部のピッチャーやってる叶さんちの息子さん、コスプレ癖があるんですって!なーんて近所で囁かれる日も近いのではないか、それを考えるといくら叶とはいえ少し哀れになってくる。そしてそんな風に私の頭を悩ませているのは叶の彼女のだった。は根っからの猫好き。猫を愛してる。そんなが、最初に「叶くんってルリのお向かいさんだよね!?」と言ってきたときは本当に驚いた。えええなんであの叶!?とか思ったし(だってガキ大将…)、今まで猫猫猫で男に興味がなかったが男の名前を出してきたのだからそりゃあもう驚きモモの木パパイヤである。なんで叶が好きなのか、と聞いたときは「え、目がつり目で猫っぽくない?」と言われものすごーく納得してしまったけれど。そして付き合い始めてからが叶の悲劇。ことあるごとに猫耳カチューシャ、付け尻尾、猫の着ぐるみ。猫猫猫猫猫グッズ尽くし。たまに、「なんで俺、あいつが好きなんだろう」と言っているけれど、それは私も謎だ。お前に判らない限り私も判るわけがないだろう。




「これ、よくバレなかったね」
「わたし頑張っちゃったよ。だって修くん起きてる時は絶対つけてくれないから」




は写真を眺めて満足そうに笑っている。その写真、「寝顔が可愛かったから撮った」とかだったら、まだ可愛い行動なんだと思うけれど(それでも盗撮は犯罪です)、「寝ていたから猫耳カチューシャ勝手につけて可愛かったから撮った」だから、叶が可哀相になってくる。盗み撮りされた上に「可愛いでしょ!」って色んな人に見られているんだから、ご愁傷様。当の本人は悪びれた様子もなく「猫な修くん…かわいい!」と嬉しそうに写真を抱き締める。うわぁ、こりゃあ本格的だあ。






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って本当に叶のこと好きなの?」
「好きだよ大好き!フォーリンラブだよ!…ルリ、わたしの愛疑ってるの?」
「ものすごーく疑ってる」
「ひっどーい。わたしこれでも修くん一筋なんだよ。最近は他の猫に浮気してないんだから」
「(前はしてたのか)だって、叶が好きっていうより猫っぽいから好きって感じなんだもん」




だってほら、絶対叶より猫っぽい人が現れたらそっちに行っちゃうでしょ。私がそう言うとはあははと苦笑い。(図星か)せめて形だけでも否定してあげればいいものを、正直すぎるものだからそれもそれで困ったものだ。は困ったような顔をしながら「そりゃあ揺らいじゃうと思うよ。わたし猫大好きだもん、この世で一番愛してる動物だよ」と言う。うんうん、のその気持ちはわか…らないけど伝えようとしていることはわかるよ。だけど「それでも、わたしは人間の中では修くんが好きなの!」なんの根拠も証拠もないくせに、それだけははっきりと言った。あーあ、こういうところだけは意味もなくはっきり言うもんだから私もこれ以上言えないんだよね。「確かに、最初はつり目が猫みたいだったから好きだなって思っただけだけど、今はそれだけじゃないよ。修くんだから好きなの!」そういっているの頬は少し赤みがかかっていた。流石のでもこういうことをはっきり言うのは恥ずかしいらしい。…普段すごいのろけちゃってるくせに。(ああ、それは猫耳の叶に対してであって、叶自身についてじゃないからか)(あるいは興奮からなる赤みか)




「基本的には野球ばっかりでわたしに構ってくれないこともあるのにたまに甘えてきたり。野球、やってるところかっこいいし。今はもう、つり目とか関係なく好きなんだよ。…もう、疑うなんて失礼千万だよねっ!」
「うーん、でもの態度はいまいちわかりにくいし」
「そうかな?皆、わたしの愛情表現はストレートすぎるっていうけど」
「ストレートだけど…猫が好きなのか叶が好きなのかいまいち伝わりにくいもん。叶もそう思ってるんじゃないの?」
「…うう、そういえば最近修くんの態度が素っ気無いかも」
「でしょー?」




まぁ叶が素っ気無いのは今に始まったことじゃないし、原因はそれだけじゃないだろーけど。「よし、決めた!一週間猫に触らないし、修くんにカチューシャさせたりしない!」おお、自ら猫禁止令を出すなんて、ちゃんと叶のこと考えてるんだ。もそういう風に決められるのは偉いなあ、なんて関心してたら、「写真だけで乗り切る!」と付け足して思わず溜息が出てしまった。うん、やっぱりそれがだよね。叶が苦労する日はまだまだ続きそうだ。(そのうち猫恐怖症とかになっちゃったりして)(そうだったらきっと楽しいのに)






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[2009/07/18]