後輩で野球部マネージャーのは、葵と涼の見分けがつかないことが現在の悩みである。ドリンクなんかも渡す時に「はい、涼くん」と渡した相手は葵だったなんてことは野球部内でならもう日常。唯一の判別方法は背番号だけ。それも普段の練習着には番号なんてかかれていないものだからほぼ意味はないのだけど。オレもたまにややこしくなるけど、あそこまでではない。そしてそんなに葵と涼は結構懐いている(てか惚れてる)。そんなは只今(本人にとっては)非常に大きな問題を抱えている。言うまでもなく問題はあの双子なのだが、葵と涼が悪いともいえない問題なので、だからこそ困っている。 「柴センパイ、これってどっきりとかからかいとか罰ゲームじゃないですよね…?」 そう、彼女は現在生まれて初めて受けた告白について戸惑いを覚えているところなのである。罰ゲーム…ではないと思う。つーかあいつら明らかにに惚れてるからなァ。寧ろ今までそれに気付かなかったに天晴。二人はしょっちゅうからかったり絡んだり(まさに小学生男子の行動)、そして時たま優しかったりして、すごいアピールしてたのに、全くこいつには通じていなかったというわけだ。そう思うと少し葵と涼が不憫である。「つーか、どっちにされたの?両方?」ふと気付いたことを聞くとはぐっと黙り込んでしまった。オイオイ、まさか。いくら見分けのつかないでもそれはねーよな?不安に思っているとは重たそうに口をそっと開いた。「…わかりません」 ハァー。思い切り溜息を吐いた。まさか此処までとは。せめてさ、たまに間違えても見分けつくようにならなきゃだめだと思うぞ、オレは。そもそもあの双子は髪の色やら服の趣味やらで適度に特徴が出てるんだ。つーかあいつらもが見分けついてないこと知ってンだから告る前に名乗れよ!と思ってしまう。…緊張しててきっとそんなこと頭からすっからんと抜けていたのだろうけど。 「センパイはどっちだと思いますか?」 「わかるわけないだろ」 「ですよねー。…でも本人に『告白してきたのはどっち?』なんて聞けないし」 「(聞いたとしても、絶対自分って言うだろうな、どっちがどっちでも)」 それで自分を意識してもらえるなら絶好のチャンスだもんな。オレの想像だけど、我ながらずるい考えだとも思う。(そして勝手に考えておいて言うのもなんだけど、あいつらがそういう姑息な真似をするやつじゃないことを信じたい)でもの性格を考えると本人に聞くなんて失礼!とか思って絶対聞けないだろーなとも思う。でも聞かない限りどっちがしたことなんだか判らないし。さて、如何したものか。こういう時、何度か見分け方教えたけどもうちょっとしつこく教えてよけばよかったな、と後悔。せめて一目では無理でも少し話せばわかる程度には、とか、たまに間違えるけど基本はなんとなーく、とか。それにどっちがどっちだか理解していないとこれからも困る。もし告白の相手がわかったとしても、普段の見分けがつかないんだからは意識できないし、おまけにOKを出したとしてももしかしたらどっちかがどっちかに成りすまして色々する可能性だってあるしな。(でもやっぱりの性格を考えると、…略)葵と涼はお互いに好きな人が同じになっちゃってあまりいい思いはしてないかもしれないけど、こういうところは双子の利点だよな。(我ながら…略)(勝手に考えて置いて…略) 「センパーイ、さり気なく葵と涼にに聞いてくださいよォ」 「パス、意味ないだろ」 「なんで!柴センパイの白状者!」 はムッと頬を膨らませる。そういうところが可愛かったりすんだよなぁ。「ま、頑張れよ」可愛い子には旅をさせよ、とはきっとこのことなんだろう。そう思いながら手を頭の上に置いてやると「…私、葵と涼よりセンパイのほうがスキです」とは呟く。「は!?」ビビッて声を上げると「お兄ちゃんがいたらこんな感じなのかなァ…」と続けて言った。あ、焦った…。一瞬マジで告られたのかと。勘違いした自分が恥ずかしい。ああ、でも「兄」というのは言い当てているかもしれない。「センパイ顔赤いっす!」からかうように笑うが憎らしくなって、頭の上に置いてある手を動かして髪をグシャグシャにしてやった。「きゃー!センパイやめ、やめって!」と騒ぐを見ると暫く恋路には目が向かなそうだ。 曖昧
ツインデイズ
「、ドリンクちょうだ…あー!」 「柴先輩、なにとじゃれてンすか。離れてください!」 「私はセンパイといたいの、邪魔しないで!」 「「!(がーん)」」 「(こりゃ、本格的に馬に蹴られそうだなぁ)」 [2009/02/11] |