「和せんぱいてさぁ、エロ本持ってないんかね」
「ぶっへええええ!!」
「ちょ、迅きたな…じゃなくて!!和さんがそんなもの持ってるわけないでしょこのタコスケ!」
「何言ってるの、和せんぱいだって立派な健康的な高校生男子だよ」




迅が飲んでたスポーツドリンクを大量に吹いて、俺はたぶん顔が相当赤くなっているだろうと思うけれどちょっと教育によろしくない発言をしたに説教を食らわせるべく指をビシッと指した。けれど、に言われた言葉でそういや和さんも高校生男子だったってことを思い出させる。和さんて、普段落ち着いてて頼もしいから、そういうのってイメージにない。一方は、真面目な和さんが持ってないものを全て凝縮したような女だ。自分が持ってないものを持ってる人間に惹かれるってよく言うし、まさにそれをそのまま当てはめたようなカップルだ。だけど、和さんの持たないものを持ちすぎたにはいささか問題がある。




「この前、和さんの部屋に行ったの」
「…二人きり?」
「そ、家の中は二人きり。それでね、私としては何かあることに期待だったんだけど……ダメだった」
「え、なんで」
「だってあの真面目な和せんぱいだよ。『試験が近いから勉強しよう』ってことで家に行ったんだから、エッチなんてするわけない」
「ええ、え、」




え、え、えっちだなんてよくもまあそんな恥ずかしい台詞を女のお前が堂々といえるな!!俺せっくすって言うのも恥ずかしいのになんかえっちっていうと本当にえっちみたいな雰囲気で、なんかえ、えろちっく?うーんなんていうんだろ、まあなんかほんのりピンク色なイメージが浮かんじゃうんだよ!(俺だって高校生男子だ!)迅も同じらしく、顔がほんのり赤い。そして本来ならばもっと恥ずかしがるべきの女のはずのは特に気にもせずそのまま続けて「それでね、ついでにちょっとエロ本探してみたんだけど、なかったんだよねーこれが」なんて言ってケラケラ笑う。いや、そんなこと大声で言わないで、此処教室だから。俺らまでも変な目で見られるだろーが!


そう、これが問題だ。下ネタが好き、いや好きすぎる。慎吾さんにお勧めのエロ本聞いたりするし、自慰行為って如何いう風にすんのとか、牛乳ぶっかけられた女の子っていいよねげへへとかバナナよりフランクフルトのほうがエロくて好きだとか言うし、くれよんしんちゃん好きだし、男の急所の名前とか躊躇せずに大声で言うし。「今度お前のピーーを使えなくしてやろうか?」は決め台詞だし。和さんという素敵な彼氏がいながらも普通に俺らに逆セクハラしてくるし。なんでこんなのが去年夏大優勝校である桐青高校の野球部マネやってておまけにキャプテンの彼女やってるのか世界がひっくり返っても解けない謎だよ!!てゆううううかおまえ女だろ!!ってつっこみたくなること多少。俺らがどんなにを睨んでも動じずに何時ものとおりに怪しげなえっちぃ話を続けてる。「ね、これって不健康と思わない?それとももっと人には見つからないようなすごい場所に隠してあんのかな?ねーねーあんたら部室とかでそういう話してるんでしょー其処んとこどーなの!?」そういいながら迅の肩を掴んで揺らす。いや、慎吾さんじゃないんだから和さんとはそういう話はしないよ。ていうか俺としてはあの和さんが(てゆーか和さんに限らず他の誰かが)エロ本見ながら自分のものを慰めてるところを想像したくないんだけど、こいつのせいで嫌でも頭の中に浮かべてしまう。




「俺、今すぐ頭の中掃除したい」
「…おれも」
「脳味噌は掃除できないよ。そんなことより如何なの、其処んとこ」
「「和さんは持ってない」」




俺たちは声を揃えて即答した。和さんは持ってない、持っているはずがないというか寧ろそういうことをしているという想像をさせないで!もう俺と迅の切実な願いであった、あったがしかしはそれをぶち壊すために生きているような女だ。そう簡単には引き下がらなかった。「でもでも、私としては和せんぱいの部屋に行ったらおまけに二人きりだったら、もう性欲むんむんなわけ。そんな状態で『さあ勉強始めるか!』って爽やかに言われてみ?かなり萎える!でもしょうがないんだよね、それが和せんぱいだから。でもお陰で私の欲望が消えないの。男子はいいよね、エロ本読んでオナニーすれば欲望が満たされるんだから。女はねせいぜいエロい漫画読んであはんでうふんと想像するだけで終わっちゃうの、満足できないの!!だから私はね、和せんぱいとならエッチしたいし勉強なんかしたくないしエッチしたいししたいし色々シてあげたい!!」おま、だから声控えろって!!完全にクラスの注目俺らに向いてんじゃん!「ひそひそ。あの人4組の人だよね?」「ひそひそ。やだ、何大声で下ネタしゃべってんの?」「ひそひそ」「ひそひそ」「ひそひそ」って声がすごくよく聞こえる!俺のせいじゃないのになんか俺がエロ話盛り上げてるようにされてるよ!?濡れ衣だから!!エロ話で勝手に盛り上げちゃってるのはだから!




「私、彼氏にお仕置きとかされるのが夢だったんだ」
「(そんなこと如何でもいい)おれ頭痛くなってきた…」
「このエロ魔人…もう本当、どっか行って……!!」
「利央がどっか行けばいいじゃん」
「利央行くなよぉ、おれ一人にこの話聞かせる気かぁ!!!」





どっかに行けと言われたり行くなと言われたり(まあ俺としてはどっかに行きたいけど)(此処で迅を見捨てるのは不憫だ、優しさとかそういうの抜きでもう本当に可哀相な立場になる)ということで困っていたら、ふと一つの机に三人で集まっている俺らに大きな影がかかって、そこからを呼ぶ声が聞こえた。見上げると、高校生男子だけど俺たちとしてはエロ本は持っててほしくないけどにとっては持っててほしいとかそういう存在の、和さんだった。…何処から話を聞いていたんだろ。頭に漫画なんかでよく表現されるお怒りマークが見えるのは気のせいでしょうか、俺は気のせいではないかと思われるんですが。和さんはそのままの首根っこを掴んで「お前また変な話で周りに迷惑かけたな!?」と大声を。か、和さん!にも言ったけど、此処教室っすから大声は控えてほしいっす!




「だってぇ、欲求不満なんだもーん」
「あのな、女のお前がそういうこと言うもんじゃない」
「そんなの、和せんぱいが何もしてくれないからじゃん。私いつになったら脱処女できるの?」
「…そういや、お前。お仕置きされたいって言ってたよな?」




……ん?行き成り話が変わった?の質問に答えたくなかったのかな、和さんでも答えづらいことあるんだな。(まあ相手なら答えづらいことなんか山ほどあるけど)和さんの言った「お仕置き」という言葉に反応して、は完全に誤魔化されている。目を輝かせていて、あれはたぶん「何々!?何をシてくれるの!?」という期待の眼だ。でも、残念ながらさっき自分で言っていたように、和さんはすごーく真面目な人間なんだ。慎吾さんじゃないんだからお仕置きが自分の想像しているようなものではないことくらい、少し考えればわかるはずだ。和さんはにーっこりと笑って(案外腹黒いんだな、和さん)、喜んでいるを一気に地獄に引き落とす言葉を言った。




「今日はの苦手な数学漬けだな」
「………えええええ!?和さんひどい!!」








lunaticrazy






「さすが和さん。俺たちであんなに手を焼いたを一捻り…」
「そりゃあ、まあ和さんだからな」




[2008/06/25]