数年間離れていた幼馴染の再会って運命だと思うの。あの頃は小さかったけれど恋愛感情は確かで、大きくなった今でもそれは変わらず健在、というのもとっても素敵。でも、あたしとしては、小さい頃はただの友達としか思わなかったのに、大きくなって再会したら自分の持っている面影とは全く違う相手がいて、そんな昔との違いを見つけるたびに寂しくなったりドキドキするほうが展開的に大好きなの。まあ、小さい頃から好き!っていうのもそのうち「もう我慢できない!」みたいな感じで襲ったりするとあたしは好きな展開なんだけど、この展開は何年も一緒にいる腐れ縁的な幼馴染の方が合ってるのよね。だから疎遠だった幼馴染にはやっぱり、違いを見つけて悶々しているほうがいいわ。それで相手を遠くに感じたり、時には昔の話をして近くに感じたりして、二人の距離はグッと縮まるの。ああ、ロマンよね。


先輩後輩な関係で、後輩が仲良かった先輩を追っかけるように同じ高校に入るなんてものもいいよね。これは幼馴染の運命的な偶然とは違って必然性を感じるからもう後輩の先輩に対する思いにゾクゾクっとしちゃう!そしたら先輩が留年しちゃっててショックなんだけど、実は嬉しさのほうが感情的には大きいといいな。同じクラスになれて嬉しい、先輩後輩という名前の壁が微妙に崩れたみたいで嬉しい、なんて感じにね。それでもたまーに先輩の友達がクラスに遊びに来たりなんかして、自分の知らない話やら何やらされて疎外感、なーんてものもいいよね!それでムカついて嫉妬して、そこで初めて自分の気持ちに気づくの!自分が先輩を追っかけていたのは憧れなんかじゃなくて恋だったって!そうしてちょっと距離とったりなんたり…って其処は普通の少女漫画ね、でもベタなのがいいの。ベタってロマンよね。


そしてこの話のミソは、この話の登場人物が全員男だってこと!




「去年一年間で充分わかっていたことだけど、」
「お前、自分の彼氏と後輩でそういうこと考えるなよ…」
「だってしょうがないじゃない、あんな仲のいい様子を見せ付けられちゃあ誰だってそれくらい妄想するわよ」
「「しねーよ」」




梶と梅は声を揃えてあたしに対して侮蔑の意味を込めた目をしながら言ってきた。良郎、梶、梅とは去年一年間同じクラスで、三人はよく一緒につるんでいたものだから、「三人が三角関係だったら素敵なのにね。ほらドロドロのベタベタ、まるで昼ドラみたいじゃない?」といつも言っていた。(そしてそのたび二人は白い眼であたしを見ていて、良郎だけが「え?どういうこと?」みたいな感じで理解してないようだった)(そんなお馬鹿な良郎がかわいい!)良郎が留年した今、そういう妄想の対象はこの二人から良郎と同じクラスの三橋くんと泉くんに移された。(といってもたまに、二人が良郎の作った応援団に入っているのは実は良郎が好きだったりしてとか考えちゃうけどね!)今は良郎以外は同じクラスということと、あたしの彼氏である良郎の友達付き合いということもあって、良郎抜きの三人で話すことも割りと最近は多い。そういうときあたしが最近話題に出しているのはこれだった。去年、最初にこういう感じの話をした時には「男同士でくっつけて何が楽しいんだ」と聞かれはしたものの、今ではあたしの言動を不思議に思っておらず聞き流すように聞いているのだ。(ちなみにその質問の答えは「同性だからこそで悩む当然の悩みがあたしにとってはとっても魅力的」だからである)




「良郎と三橋くん、泉くんは絶対何かあると見たわ」




良郎に聞いたところ、三橋くんは幼馴染だし泉くんは元後輩。こんな素敵な三角関係、中々ないと思うの。三橋くんは人見知りが激しくて最初はあたしにも中々懐いてはくれなかったけれど、良郎には金髪だけど何処か保父さん的な雰囲気が出ていてそれで幼馴染のせいもあってか全く怖がらずに寧ろ懐いている。泉くんは元後輩とは思えないような毒舌マシンガンなのに良郎との関係を見ていると相手を嫌ってそういうことしているわけじゃなくて、本当に「喧嘩するほど仲がいい」という言葉が絵になるような人だと思う。泉くんと三橋くん、それでこっそり田島くんも絡んでくれるととっても楽しいと思うの。田島くんは二人みたいに幼馴染とか後輩って称号はないけど、ないからこそ壁を感じて悔しくなると思うの!関係がないって言うのもある意味の特権よね。うん、やっぱりあの三人(+1)には何かあるわ、何かあったほうが面白いって絶対!




「何かって…何にもねーだろ」
「つーか何かあったら可笑しいだろ」
「梶の今の発言は世界中のホモセクシュアルを敵に回したと見たわ、天誅!」
「いて!」




グーで殴ると案外手が痛かった。梶も頭が痛いらしく押さえている。梅がその横で頬杖をついて呆れたように眺めている。…チッ、此処で梅が「おい大丈夫か?何すんだよ」とか言ってあたしを睨んでくれるとあたしとしては嬉しいんだけどね!(睨まれて嬉しいわけじゃないよ、あたしはマゾじゃないから!)「でもよー」梅はその格好のまま痛がっている梶なんか気にせずに言う。というか、あたしが喜ぶかどうかは別として、もうちょっと気にかけてあげたほうがいいんじゃない、あんたたち友達でしょ。(まあ天罰を下したのはあたしだけど)




「例えば、浜田と三橋…泉でもいいけどがそういう状況になったとして。お前はそれでいーの?」
「え?なんで?」
「なんでって…お前アレの彼女だろ、ヤキモチとかねーの?」
「男女の関係と男子同士の関係は全く別物でしょ?その辺はすっぱり割り切ってるから。嫉妬するよりそういう状況をじっくりこの目で見てみたいよ」




それを聞いた二人は同時に溜息を吐いて、「「彼女失格」」と同時にあたしに指を指していった。うええええ今のハモり素敵じゃありませんでしたか!?心の中で繋がってる感がバリバリ伝わってきました!!この二人実はデキてるんじゃないですか?そうだったらあたしとしては素敵だと思うけど。あたしがそう目を輝かせて二人を見ると、二人はとうとう目を合わせなくなったので、ゴホン、と咳払いをして講義をする。「ちょっと、人を指指しちゃいけませんって先生に習わなかったの?あ、そういえば先生と言えばね、」あたしが喋り出すと二人はもう一度深い深い溜息を吐いた。








性愛的鑑賞


シミュレーション




「(もうだめだこいつ)」
「(手に負えねー)」




[2008/01/18]