「天真くんはあかねちゃんがお好き?」




縁側に座っているわたしがそう尋ねると、わたしの隣に座っていた天真くんは飲んでいた茶を吹いた。勿体無い上汚いなぁと思いながら、天真くんを見つめ続ける。見つめられていることが気になるのか、天真くんはチラチラとわたしを見てくる。ほんのり頬が赤い。あ、これは図星かな。




「あのなー…なんで行き成り話が其処に飛ぶんだよ」
「だって明らかにあかねちゃんの話が多いし」
「そりゃ、何時も一緒にいりゃーな」
「あかねちゃんの話するときすごく楽しそうだし」
「嫌いな奴でもない限り、普通はそういう風に話すと思うけど」
「そして何より、よくあかねちゃんのこと見てるじゃない!わたし、よく視線感じるもん」
「(それはあかねじゃなくてお前を見てるんだよ!!)」




ほら一番最後の、否定しなかったじゃない。これでもう確定的だ。
わたしはなんの力も持っていない。だから戦いにも参加できないし、ただのお荷物なだけなのだ。だったら、せめてプライベートのお悩み相談くらいは受け付けようじゃないか!と思ったのがこの話の始まりの切欠。そして、最初のターゲットは天真くんなのだ。だって、八葉の中で一番良く喋るし、話しやすいし、わたしのお兄ちゃん的存在であって頼り甲斐がある。そして何より、今一番暇な人が天真くんだったからだ。(ってあれ?頼り甲斐があったら相談されるわけないんじゃない?)(まぁ、いっか)




「あかねちゃんが好きなら、協力するよ?」
「だから、違ぇって」
「無駄な抵抗はよしたまえ、天真殿」
「誰の真似だよ」
「それに、わたしとしてはお兄ちゃんの恋を応援してあげたいの」
「誰がお兄ちゃんだ!」




ポンと隣にある肩に手を置いたら、少し怒ったようにように天真くんは言った。なんで怒られているかわたしには判らない。ただ、協力してあげようとしただけなのに、如何してそんなに怒られなくちゃならないのかわたしには判らない。だって、そうでもしなきゃわたしは皆に必要とされないのに。わたしは必要とされたいのに。だからお悩み相談教室を始めたのに。どんどん沈んでいくわたしの心を知ってか知らずか、天真くんはハァと目の前で大きな溜息を吐いた。そうして未だ肩に置かれたままとなっていたわたしの手を握って、そのまま引き寄せてきた。自然とわたしは天真くんの腕の中にポスッと倒れこむカタチとなった。何があったのかわたしの頭は理解不能のまま顔を上げると、すぐ近くに天真くんの顔があって驚いた。そうして暫く間が空いてから、天真くんがそっと口を開いた。




「俺は、お前の兄貴じゃねぇよ」




低い声、睨みつけられるような目つき、凍る背筋。わたし、天真くん見るとき何時もこんなにドキドキしてたっけ?天真くんが何時もと違う様子で、怖いから?ううん、それはちょっと違う気がする。背筋は凍るし、ドキドキもするけど、怖いとは思えない。だって天真くんだもん。




「俺は、あかねじゃなくてお前が―――」
「ただいま!二人とも何してるの?」




天真くんが何かを言おうとした矢先、元気よく桃色の髪を揺らしたあかねちゃんが怨霊退治から戻って来て、行き成り現れた。それに驚いたのか天真くんはわたしを押し返して、まさに「今何かがありました」みたいな雰囲気で苦笑している。それを見たあかねちゃんは(勿論だけど)不審そうな顔をした。




「天真くん如何したの?」
「な、なんでもねぇよっ。…俺、頭冷やしてくる!!」




去り際にチョロっとわたしのほうを見たけど、それが如何いう意味なのかは判らない。だけど、わたしはその視線にまたなんだかドキドキしてしまった。止まらない鼓動。さっきまでの自分達を思い出すと、今更だけどちょっとだけ恥ずかしくなってくる。思わず両手で頬を覆っちゃうくらい。それに気付いたあかねちゃんは今度はわたしに「如何したの」と聞くけど、わたしは答えられないくらい恥ずかしくて、天真くんと同じように逃げてしまった。だってもうこれは、わたしと天真くんだけの、






ひみつのはなし




[2007/02/17]